性格の違う2人が本音でぶつかり合い、互いを本当に理解する
第91回アカデミー賞で「作品賞」「助演男優賞」「脚本賞」を受賞した「グリーンブック」を見てきました。
映画の内容は、天才ピアニスト「ドクター・ドナルド・シャーリー」が運転手兼ボディーガードに「トニー・”リップ”・バレロンガ」を雇い、差別色が濃いアメリカ南部地方をツアーで回るというお話しです。
性格がまったく違う2人の掛け合いが面白くて退屈することなく見ることができます。2人の関係が徐々に深くなっていき、最後のシーンは感慨深いものがありました。
では感想を書いていきます。多少ネタバレ含みます。
トニー(ヴィゴ)とシャーリー(アリ)
主人公の1人トニーを演じるのは「ヴィゴ・モーテンセン」です。ヴィゴ・モーテンセンと言えば、ロードオブザリングのアラゴルンです。私はヴィゴのイメージがアラゴルンで止まっていたので、今回のトニーの役は少し衝撃でした。下品で短気で粗暴で中年太りのおじさん・・・。格好良く、剣を振り回して戦っていたアラゴルンの面影はありません。年齢による変化もあると思いますが、役者ってすごいなと思います。
乱暴者でちゃらんぽらんなトニーですが、実は愛妻家(奥さん綺麗!)で男気があって憎めません。けっこう好きなキャラクターです。
一方のシャーリーを演じるのは「マハーシャラ・アリ」です。アリは映画「ムーンライト」でアカデミー助演男優賞を受賞していて、今作でも助演男優賞を受賞しています。
アリの演技ですごく印象に残ったシーンがあって、アリ演じるシャーリーが雨に打たれながら自身の境遇を吐露する場面です。シャーリーが自身の孤独、誰にも理解されない淋しさをトニーにぶつけます。アリの鬼気迫る演技が、迫力があるとともに悲しみを帯びていて、圧倒されました。アカデミー賞を取ったのも納得です。
本音で語り、互いを理解する2人
映画の面白いところは、性格がまったく違うトニーとシャーリーの掛け合いです。トニーは基本ちゃらんぽらんで適当、対してシャーリーは意識が高く、しっかりしています。「気楽に行こうぜ」というトニーに対して「ちゃんとしろ」とシャーリーは言います。一見交わらないように見える2人ですが、旅を続けて話していくうちに距離は近づいていきます。
象徴的なシーンはケンタッキー州でケンタッキーのフライドチキンを車内で食べるシーンです。
トニーは本場のケンタッキーだと言って大喜びですが、シャーリーは関心がありません。手づかみでフライドチキンを頬張るトニーに対して、シャーリーは手づかみで食べたら汚れるといって最初は食べるのを拒否します。
しかし強引に勧めるトニーに根負けして、フライドチキンを食べます。最初は嫌がっていたシャーリーですが美味しかったのか、チキンを完食します。そして残った骨をトニーのマネをして、車外にポイ捨て!シャーリーがトニーの考え方に感化されて変化した瞬間でした。2人の関係が変化しているのを象徴していて良いシーンです。
トニーもシャーリーに共感して、考え方が変わっていきます。最初は金のために仕事をしていたのかもしれませんが、最終的にはシャーリーのために働きます。シャーリーが食事するのを拒否するレストランのオーナーに詰め寄るトニーは格好良いです。
性格の違う2人が互いに影響されて変化していくのを見て、本音で語り自分を偽らないことは大切だと思いました。生まれも育ちも立場も違う人間がわかり合うには、自分の思っていることを正直に話す必要があります。もちろん正直に話すことで衝突することもありますが、自分を偽ってきれい事だけ並べても相手には理解されないと思います。相手に合わせて我慢していてはストレスがたまります。
相手の本音を知ることで、相手の事を本気で考えて、初めて相手を深いところで理解することができます。性格の全く違う2人だからこそ、本音のぶつかり合いで人間はわかり合えることを証明できています。
まとめ
アカデミー賞を受賞した「グリーンブック」。ものすごくドラマティックな展開があるわけではないのですが、鑑賞後に何だかジーンとして心が温かくなりました。
最後に印象に残ったセリフを紹介します。トニーが兄に手紙を送るのをためらうシャーリーに対して「淋しいときは自分から行かなきゃ」(ちょっと違うかもしれません)というセリフです。人種、言語、性格、性別が違ってもコミュニケーションの基本は変わらないのだと思いました。待つのではなく自分から行ってみることって大切です。行ってみると案外うまくいくんですよね。
シャーリーと旅をともにして本音でぶつかり合い、彼を理解したから出てきた言葉です。この言葉でシャーリーの考え方も変化しました。トニーの考え方が変わったから出てきた言葉であり、シャーリーの考え方を変化させた言葉であります。2人の関係の変化を象徴する印象的なセリフでした。