『英雄伝説 軌跡シリーズ』は、15年以上続いている日本ファルコムの大人気RPGです。私も第1作『英雄伝説 空の軌跡』から長年プレイしていました。ですが、少し熱が冷めてしまい、最新作の『黎の軌跡(くろのきせき)』は今までプレイしていませんでした。
『創の軌跡』は、クロスベルを舞台にした『碧の軌跡』、『零の軌跡』、エレボニア帝国を舞台にした『閃の軌跡シリーズ』の集大成的な作品でした。シリーズに一区切りがつく形となり、それと同時に私の『軌跡シリーズ』に対する熱も少し冷めてしまったのです。私と同じように『創の軌跡』で一息ついてしまったプレイヤーも多いのではないでしょうか。
『黎の軌跡』はシリーズが完結してから、余裕があったらプレイしてみようかなと考えていました。
しかし、『黎の軌跡 Ⅱ』のPVを見て考え方が変わります。『黎の軌跡 Ⅱ』では、『創の軌跡』で活躍したスウェンとナーディアが登場していたのです!この2人は特に好きなキャラクターだったので、私の軌跡への熱が一気に高まっていきました。
そして、『黎の軌跡 Ⅱ』の前に、前作『黎の軌跡』をプレイしてみることにしました。すると、すげぇ面白いじゃないですか!
今までにはいなかった大人な主人公のヴァン、アクションとコマンドが融合した新感覚のバトル、過去の軌跡シリーズの流れを汲みながらも新しい展開を見せるカルバード共和国での物語。面白い部分がたくさんあって、すっかりハマってしまいました。今まで軌跡シリーズをプレイした方には、是非プレイしてもらいたいです。プレイしないのは、もったいないと思います!
今回の記事では『黎の軌跡』をプレイしてない方に向けて、このゲームの魅力やプレイしていて気になった点など解説していきます。ストーリーに関わる重要部分のネタバレはしていませんので、未プレイの方も安心して見ていただけます!是非、ご購入の参考にしてみてください!
『黎の軌跡』の魅力
私が思う本作の魅力は、過去の軌跡シリーズにはいなかった大人の主人公、従来のATバトルにアクション性融合した戦闘、軌跡シリーズに積み重ねによってこそ描くことのできるストーリーです。それぞれについて詳しく述べていきます。
裏と表の狭間に生きる主人公
今作の主人公であるヴァンは24歳と、過去の軌跡シリーズの主人公に比べて年齢が高めです。さらに彼は「裏解決屋(スプリガン)」として数々の修羅場を潜り抜けた経験もあるので、年齢以上に達観している部分があります。過去作の主人公が持っていた青臭さだったり、愚直さだったりするものを、ヴァンはあまり持っていないように感じました。ゲーム内で起こる様々な事件に対して、ヴァンは入り込みすぎず、あくまで仕事として一線を引いています。助言はするけど、強制はしない感じです。
警察や遊撃士に依頼できない仕事を解決する立場とあって、それらの組織ではできない解決方法を裏解決屋はとります。ウソをついたり、犯罪をあえて見逃したりといった選択肢は、これまでのシリーズではあまり出てこなかったのではないでしょうか。
印象的なエピソードは、ヴァン達が魔獣に襲われている導力バスを助けるシーン。今までの主人公なら助けた相手に対して、「当然のことをしたまでです」「お礼はいりません」といった対応をとると思います。
ですが、ヴァンは魔獣から助けた分の報酬を要求します。軌跡シリーズで遊撃士の活動を見ていた方にとっては想像できないかもしれません。裏解決屋が、遊撃士とはまったく違う立場だということが分かります。
どんな依頼に対しても報酬を求めるということは、報酬があればある程度の依頼を受けるということです。ヴァンは過去に結社の執行者であるヴァルターからの依頼も受けていたりしていました。その他にも、元泥棒や半グレの恋人など、狭間に生きる人々からの依頼を受けます。過去作と比べても、依頼人のバリエーションは豊富だと感じました。
過去の主人公との共通点もあって、リィンやロイドのようにヴァンも天然タラシです。「そういとこだぞ」というヴァンの行動を見ると、実家のような安心感を覚えます。
あと、大のスイーツ好きなところがお茶目です。ご当地スイーツに魅かれて仕事を受けているのでは?と疑ってしまう描写があり、スイーツのこととなるとちょっと間抜けになるところが良いアクセントになっています。
スピーディで戦略性が増した戦闘
本作では、アクション性のあるフィールドバトルから従来のATバトルであるコマンドバトルにシームレスに移行するシステムがとられています。ロードを挟まずバトルが始まるので、とてもスピーディです。序盤は敵が固いので苦労する場面もありますが、慣れてくるとクラフト、アーツを駆使してテンポよく敵を倒すことができます。
ただ、フィールドバトルは攻撃、回避、ため攻撃とアクションの種類が少ないのでワンパターンになりがちです。フィールドバトルの攻撃は与えるダメージも少ないので、それだけで倒せるのは本当に雑魚だけです。ですので、戦闘の主体は今までのATバトルの流れをくんだコマンドバトルになります。
コマンドバトルは従来のATバトルよりも操作が快適になりました。特に移動と攻撃がセットで、できるようになったのは良かったです。クラフトによっては、側面、背面特攻といった形で攻撃を当てる場所によってダメージが変わるので、移動の重要性が増しました。
新システムでは、S.C.L.M.(スクラム)というものがあります。キャラクター同士が隣接するとスクラムを組み、追撃が発生したり、アーツ、クラフトの威力が上昇したりします。しかし、キャラクターが隣接することによって敵の範囲攻撃を受けやすくなるデメリットも発生します。敵の動きを見ながらスクラムを組むかどうかを考えるのは面白かったです。
あと大きく変わったシステムは、Sブーストです。戦闘中にブーストゲージを消費することによって、ステータスアップやスキルの発生確率が上昇します。ゲージは1キャラクターにつき最大2本使用することができ、2本使用するとSクラフトが使用可能になります。Sクラフトを使用するとブーストゲージの総量が増えていくので、Sクラフトは使えるときに使っておくのが攻略のキモになると感じました。
積み重ねがあるからこそできるストーリー
正直に言うと、『黎の軌跡』は新シリーズではありますが、今まで軌跡シリーズをプレイしてない人は物語についていくのは大変だと思います。専門用語は多いですし、会話の中での過去作キャラや事件の匂わせが多いです。用語辞典などはゲーム内にないので、初見の人が物語に入り込むの難しい気がします。(初見の方は、軌跡シリーズのポータルサイトで過去作のまとめを確認してからプレイするのがおすすめです。)
ですが、これは逆を言えば既存ファンはストーリーを深く楽しめるということです。過去作のキャラと意外なところで新キャラが繋がっているのがわかりま。レンやフィーの成長、久々に登場したジンの活躍など過去作のキャラが物語にどんどん関わっていくのは軌跡シリーズの醍醐味だと思います。
『創の軌跡』で起きた事件は今作にどう関わってくるのか、結社「身喰らう蛇」は共和国で何を企んでいるのか、リィンの姉弟子にあたるシズナの正体などなど今までの軌跡シリーズをプレイしていたら気になることばかりです。新たな広がりを見せる軌跡ワールドからは目が離せなくなってしまいます。
また、本作は過去作と比べると、序盤からけっこう重いストーリー展開が待っています。だからといって、物語が暗くなるわけではなく、主人公たちは割り切るところは割り切っています。仕事とプライベートは分けるという感じで、ウジウジ、クヨクヨはしないのでストレスが溜まりません。主人公のヴァンが大人だからこそのストーリー展開だと思います。
気になるところ
『黎の軌跡』をプレイしていて気になったところもあります。一つはロード問題、2つはボイスがあったりなかったりするところです。ロード問題はPS5版なら解消されているらしいので、PS5を持っている方はPS5版をプレイした方が良いと思います。
ロード問題
私はPS4版でプレイしたのですが、ロード時間はちょっと長く感じました。特にイベント間で挟まれるロードが気になります。イベント中に場面転換の度に5秒ほどロードが入るので、回想が何回も差し込まれるとその度に待たなければいけません。ストーリーに集中できない場面も中にはありました。
またファストトラベルをしてマップ間を移動するときのロードも少し長いです。建物内にファストトラベルすると、移動が終わっても人物の読み込みが間に合ってないことがあります。
その代わり戦闘時のロードはないので、そこは良かったです。イベント間とマップ移動のときのロードを差し引くと、プラマイゼロかなと思います。
違和感のあるボイスありなし
豪華な声優陣が出演する本作ですが、フルボイスではありません。それだけ膨大なテキスト量なので、しょうがないのかなとは思います。この声優陣で全てのテキストにボイスを当てたら、とんでもないギャラになりそうです。
違和感があったのは、イベント内でボイスありのキャラとなしのキャラが会話する場面です。新キャラクターの登場時に多く、新キャラがボイスがある一方で既存キャラのボイスがないと不自然な場面がけっこうあります。仕方ない場面もあるかと思いますが、せめて喋らせるところはそこにいる全キャラ喋らせて欲しかったです。
まとめ
・スピーディなアクションと従来のATバトルが融合した新しい戦闘
・軌跡シリーズの積み重ねを感じるストーリー
・ロード時間とボイス関連で気になるところがある
『黎の軌跡』は従来ファンが楽しめる仕掛けが施されているとともに、新しい境地も開いています。『創の軌跡』で熱が冷めてしまった方も、本作をプレイすれば熱が戻るはずです。進化した軌跡シリーズ最新作をプレイしてみてはいかがでしょうか?