自分の感覚はあてにならない データを基に正しく物事を見よう
「FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」では、思い込みにとらわれない事実に基づいた正しい物の見方が書かれています。
世の中は年々物騒になり、格差はどんどん拡大して、世界は悪い方向に進んでいると思ったことはないですか?
私も「世の中はだんだんと悪い方向に進んでいる」と感じていた1人でした。しかし世界のあらゆる分野の統計データを見ると、世界はどんどんよくなっていることが分かります。
「世の中が悪くなっている」と思っていたのは、知識不足だけが問題ではありません。人間の本能による思い込みで、物事を見てしまうのが原因です。
本書では人間の本能による10の思い込みを解説するとともに、事実に基づいた物事の見方を知ることができます。
10の思い込み
「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」では以下の10の思い込みについて書かれています。
分断本能 「世界は分断されている」という思い込み
ネガティブ本能 「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
直線本能 「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み
恐怖本能 危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み
過大視本能 「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み
パターン化本能 「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み
宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
犯人捜し本能 「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み
焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み・・・「FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」より
読んでいて特に気になった「ネガティブ本能」と「犯人捜し本能」について紹介していきます。
ネガティブ本能 「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
「世界はどんどん悪くなっている」と、なぜ思い込んでしまうのでしょうか。理由はネガティブなニュースほど頭に入りやすいからです。
ネガティブなニュースのほうが、圧倒的に耳に入りやすいと覚えておくこと。物事が良くなったとしても、そのことについて知る機会は少ない。すると世界について、実際より悪いイメージを抱くようになり、暗い気持ちになってしまう。
・・・「FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」より
確かに凶悪犯罪のニュースを見たり、人が亡くなったニュースを見たりした時は気分が落ち込み、世の中は悪いことばかり起こっていると感じてしまいます。しかしデータを見ると、世の中は良くなっていることがわかります。
自分の感じている感覚とデータは違うのか、気になって日本の犯罪件数について調べてみました。
日本の刑法犯の認知件数は、平成25年は1,314,140件に対して、平成29年は915,042件でした。凶悪犯の認知件数は平成25年が6,757件に対して、平成29年は4,840件です。(平成29年1~12月犯罪統計資料【確定値】訂正版より)
年を追うごとに確実に件数は減っています。数字だけ見ると犯罪は減っていて、世の中は平和になっています。
ひとつのネガティブニュースから、「世の中はどんどん悪くなっている」と全体に考えを及ぼすのは間違いだとわかります。「良くなっている」事実が考えに入っていないからです。悪いことばかりに気をとられるのではなく、良くなっていることに目を向けなければいけません。
だからといって「良くなっている」事実だけを見て、楽観的になることは間違いです。実際に起きている犯罪を無視することはできません。悪いことは事実として受け止めて、同時に「良くなっている」事実があることを意識して物事を見ることが大切です。
犯人捜し本能 「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み
ミスや問題が発生すると、ミスをした人や問題を起こした人への責任追求は良くあることです。しかし責任者が辞めたからといって、問題の解決になるでしょうか?問題解決のためには、ミスの原因を突き止めて、解決策を考えないといけません。
誰かが見せしめとばかりに責められていたら、それに気づくこと。誰かを責めるとほかの原因に目が向かなくなり、将来同じ間違いを防げなくなる。
・・・「FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」より
犯人捜し本能に当てはまると思ったのが、統計不正問題です。賃金や労働時間を示す毎月勤労統計での不正調査があった問題になります。責任者である厚生労働大臣の辞任を要求する声も上がっています。
私はこの問題で責任者の追求よりも、なぜ不正が起こったのかの原因の解明と、同じ問題が起こらないように再発防止策を考えることが先決だと思います。責任者の首を変えただけでは、問題の解決にはなりません。
同じように政治の問題が起きたときや会社の不祥事があったときに、わかりやすい悪者を作る傾向があります。犯人捜しに終始するのではなく、根本となる原因究明と解決策を考えていけるようになりたいです。人ではなく、仕組みに目を向けていくことが大切だと思います。
まとめ
「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」は、物事を見るときの思い込みをなくして、正しく見る方法が書かれています。本書を読んで、いかに自分の感覚があてにならないかがわかりました。悪いことばかりに目を向けてしまうのは正していかないといけません。