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山際淳司「スローカーブを、もう1球」を読んでの感想

スローカーブをもう1球

スポーツ選手から生き方を学ぶ

「スローカーブを、もう1球」は様々なスポーツ選手にスポットをあてて、スポーツの素晴らしさ、怖さを描いた短編集です。それぞれの主人公の生き様が緻密な描写によって表現されていて、臨場感があります。実際にそのスポーツ選手が書いているのではないかと錯覚するぐらいの心理描写に驚かされました。

江夏の21球

特に印象に残ったのは「江夏の21球」です。これは野球ファンなら大抵の方が分かるのではないでしょうか。

1979年の近鉄バッファローズ対広島カープの日本シリーズ最終戦の出来事です。4対3で迎えた9回裏、近鉄の攻撃で守る広島のピッチャーは江夏でした。ここで江夏が投じた21球を克明に描いています。

ここでの江夏の心理描写が細かいです。江夏のプライドの高さ、ブルペンが準備をし始めたときの怒り、無視満塁になった時のあきらめ、自分のボールへの絶対の自信、勝利への確信、最後の歓喜。全て余すことなく描写されています。

野球の緻密さ、醍醐味、怖さ、全てが詰め込まれています。1球、1球に意味があり、読んでいて瞬きを忘れるくらいでした。その場の息の詰まる雰囲気に飲み込まれそうになりました。

江夏と衣笠の関係

1番心に残ったシーンは、衣笠が江夏に声をかけるシーンです。ブルペンを準備し始めたベンチに対して、江夏が「なにしんとかい!」と怒り、不安になった時のことです。衣笠が江夏に歩み寄り「オレもお前と同じ気持ちだ。ベンチやブルペンのことなんて気にするな」と声をかけます。

この言葉に江夏は救われました。自分と同じ気持ちをもってプレーしてくれる仲間がいる。一人で野球をやっているわけでないんだと。とても心強かったと思います。

野球はチームプレイだと再認識させられるシーンでした。孤高の存在である江夏が一緒にプレーする仲間に救われる瞬間は心にグッとくるものがありました。

最後に

その他にも、高校球児、プロボクサー、スカッシュ、ボート選手の話と様々なスポーツ選手がリアルに描かれています。是非、この本はスポーツ好きはもちろんのこと、スポーツに関心のない方も読んで欲しいです。スポーツに情熱を燃やして生きる男達の生き様を感じ取っていただきたいです。

最後に「ポール・ヴォルダー」で、棒高跳び選手の高橋卓己が言ったセリフで締めたいと思います。

「スポーツはすべてのことを、つまり、人生ってやつを教えてくれるんだ」

スローカーブをもう1球
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