「考えるな!感じろ!」体験重視の東洋哲学
前回「史上最強の哲学入門」を取り上げましたが、今回は「史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち」を取り上げます。相変わらず強そうな表紙を書くのは板垣恵介先生です。
タイトル通り東洋哲学について書かれた本で、13人の哲学者の思想が紹介されています。東洋哲学は西洋哲学とは違う独自の発展をしてきました。西洋哲学と東洋哲学の思考アプローチの違いはおもしろいです。
東洋哲学は一言で言うと「考えるな!感じろ!(体験しろ!!)」という体験を重視した考えです。本書で書かれている東洋哲学と西洋哲学の違いについて紹介したいと思います。
東洋哲学と西洋哲学の違い
西洋哲学は究極の真理に到達するために、1段1段「より強い哲学」を築いてきました。先人が残した哲学を疑い、破壊し反論をして、先人の哲学より「より強い哲学」を生み出します。図に表すと階段のように、1段1段真理に向かって近づいていきました。
より優れた論、究極の真理を求めて、先人の論を乗り越えて高みへ高みへと一歩ずつ登っていくイメージ。
・・・飲茶「史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち」より
一方、東洋哲学は究極の真理に到達した状態から始まります。
東洋哲学は「ゴール(真理)を目指す」のではなく、「ゴールした」ところからスタートするのである。
・・・飲茶「史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち」より
真理に到達した人間から始まるので、西洋哲学のように先人の考えを批判、反論することはありません。
しかし時代が変わるにつれて先人の哲学が、現実と整合しなくなってくることがあります。そのときは批判するのではなく、自分達の解釈の仕方が間違っていると考え、「新しい解釈の仕方」を作り出していきます。
仏教で言うと、お釈迦様が到達した真理に対して様々な解釈がなされて、多くの宗派を生み出すことになりました。言っていることは違いますが、元をたどるとお釈迦様にたどり着きます。
また西洋哲学は頭で考え論理的な整合性を重視しますが、東洋哲学は理屈ではなく真理に到達する体験を重視します。知識として知っているだけでは「知った」とみなされません。
東洋では「わかった!」「ああ、そうか!」といった体験を伴っていないかぎり、「知った」とは認められないからだ。
・・・飲茶「史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち」より
体験重視である東洋哲学は「考えるな!感じろ!(体験しろ!!)」という考え方だと思います。真理に到達した体験は強烈ですが、言葉で説明するのは難しいですし、簡単には理解出来ません。だからこそ、真理に到達した人間と同じ体験をすることでしか、東洋哲学を真に理解することはできないのです。
印象に残った哲学者
本書で紹介されている東洋の哲人たちの中で、印象に残った哲人を紹介していきます。
釈迦
日本にも多くの宗派がある仏教の開祖である釈迦。偉大な人物として歴史上で語られるお釈迦様も、もともとは普通の人間でした。当時のインドは出家ブームで、お釈迦様もブームに乗っかって出家しました。出家の始まりがお釈迦様ではなくて、出家する大勢のなかの1人だったのです。
その中でお釈迦様が有名になったのは、通説になってしまった「苦行」という誤った考えを正して、「中道」が悟りを得るのに1番適切な方法と説いたからです。ブームには乗ったが流されずに、きちんと自分の考えを確立したことが、お釈迦様をオンリーワンの存在にたらしめたと思います。
孔子
孔子の思想を簡単に言ってしまえば、「思いやりの気持ちを大切にして、礼儀正しく生きましょう」ということだ。
・・・飲茶「史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち」より
道徳的に正しいが、当たり前のことしか言っていないようにみえる孔子が何故、キリストや釈迦と並ぶ人物として賞されているのでしょうか。これに対する本書の回答がおもしろいです。
それは心意気だ!
・・・飲茶「史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち」より
争いが絶えず、周りに俗物的な人間しかいなかったなかで、権力に負けず愚直に正しいことを言い続けた「心意気」が孔子の素晴らしいところだと書かれています。周りに流されずに自分の信じる道をひたすら突き進んだ結果、孔子の教えは儒教となり多くの人を魅了したのです。
他者に流されずに、他者とは違う自分だけの考えを言える勇気を持つことの大切さを教えてくれています。
まとめ
西洋哲学とは違う東洋哲学の考え方を学ぶことができました。過程、理屈ではなくて、体験、結果を重視する東洋哲学は西洋哲学とは違う面白さがありました。発生した地域によって思考のアプローチが違うのは興味深いです。
個々の哲学について浅くしか理解できていないので、より理解できるように勉強していきたいと思います。
「史上最強の哲学入門」感想も書いていますので、興味があればご覧ください。