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『一軍監督の仕事 育った彼らを勝たせたい』感想 日本一までの裏側とこれからのスワローズ

2021年、2年連続最下位だった東京ヤクルトスワローズは20年ぶりに日本一に輝きました。下馬評を覆しての勝利は、多くの野球ファンの度肝を抜かしたと思います。スワローズファンの私も予想していなかった快進撃でした。

2年連続最下位のチームを建て直したのは、高津臣吾監督の手腕が大きいと思います。「絶対大丈夫」という言葉でチームを鼓舞し、柔軟な選手起用でチームを勝利に導きました。特に先発ローテーションの組み方は、絶対的な投手がいないスワローズにはドンピシャではまったと思います。1軍、2軍、フロント、コーチの連携がうまくとれたのは、投手コーチ、2軍監督を過去に務めた高津監督の経験によるところが大きいのではないでしょうか。

今回ご紹介する高津監督の著作『一軍監督の仕事 育った彼らを勝たせたい』では、高津監督が2021年シーズンを振り返り、チームの将来像を語っています。スワローズファンの方には、是非手に取ってもらいたい1冊です。

それでは、本書を読んで印象に残ったところを述べていきたいと思います。

ターニングポイントとなった試合

高津監督は2021年シーズンのカギとなったカードは、開幕の阪神3連戦と交流戦のホークス3連戦だと語っています。私も2021年シーズンで、この2つのカードは印象に残りました。

今年こそはと期待を持って迎えた開幕3連戦でまさかの3連敗。開幕戦は接戦からの終盤のソロホームランで敗戦、2戦目は先発投手が序盤に打ち込まれての敗戦、3戦目は未来のエース奥川が登板するも打線の援護なく敗戦。阪神との力の差を感じた3連戦で、試合を見て今年もダメかとガッカリした記憶があります。

ですが、選手、監督は応援しているファン以上に危機感を持ったのではないでしょうか。高津監督は次のように本書で述べています。

阪神タイガース戦では、自分たちの弱点があぶり出され、もう一度立て直さなければならないと理解した。

             …高津臣吾『一軍監督の仕事』より引用

開幕カードでの3連敗が戦略を見直すきっかけとなり、その後のスワローズの躍進に繋がったと言えます。開幕3連敗したときはガッカリしましたが、今では意味のある敗戦だったと思えるようになりました。

交流戦でのホークス3連戦も印象に残っています。本調子ではないホークスとはいえ、前年覇者に3連勝できたのは嬉しかったです。スワローズがチームとして確実に強くなっていると確信できる試合でした。先発が試合をきちんと試合をつくり、打線が確実に点を取ることができ、投打にホークスを圧倒できていました。

開幕から3ヶ月というところで、地道に積み上げてきたものが、ホークスに3連勝したことで「自信」へと変わった。

…高津臣吾『一軍監督の仕事』より引用

高津監督もホークス3連戦の勝利は自信へと繋がったと語っています。開幕戦の時と比べて、チームのレベルが上がったのを実感できたのではないでしょうか。

抑え・マクガフへの信頼

日本シリーズの第1戦、スワローズは9回にリードしながらも、抑えのマクガフが打ちこまれてサヨナラ負けを喫してしまいます。このときメディア、ファンの中からは、このまま抑えはマクガフでいいのかと不安の声が上がりました。私も抑えはマクガフしかいないと思っていましたが、他のファンの方と同じく不安を感じていました。

ですが、高津監督のマクガフへの信頼は一切揺らいでいませんでした。本書を読むと、高津監督の抑え・マクガフへの厚い信頼が語られています。長年スワローズの抑えを務めてきた高津監督だからこそ、マクガフが悔しい気持ちを抱いていることを誰よりも理解していました。

今日打たれたって、明日抑えればいい。

…高津臣吾『一軍監督の仕事』より引用

マクガフは気持ちを切り替えることができる選手だと監督はわかっていたので、その後の試合もマクガフを9回に抑えとして登板させました。5戦でジョーンズに勝ち越しホームランを許す場面はありましたが、それ以外の登板では見事に0を重ね、抑えの役割を果たします。

圧巻だったのは第6戦で、マクガフは2回と3分の1を投げてオリックス打線をノーヒットに抑えました。本来は11回で降板する予定のマクガフでしたが、自ら申し出て12回も投げたそうです。高津監督の信頼がマクガフにも伝わったのかもしれません。

「点」ではなく「線」で見る

日本シリーズの第2戦で高橋奎二が完封したとき、ファンの方の中には高津監督は抑えのマクガフに見切りをつけたかもしれないと思った方もいるかもしれません。実際はそんな事はなく、高津監督はマクガフを信頼して、第3戦以降も抑えとして登板させています。チームの中では、抑えはマクガフということが確立されていたのです。

私たちファンや評論家は結果だけで采配の良し悪しを判断しますが、チームの中では今まで積み上げてきたものがあります。そのことを高津監督は次のように語っています。

すべての監督は、棋士のように何手も先を読みながらベストのチョイスをその場でしている。

評論家の人たちはそうした現象を「点」で見るだろうが、チームの内部には1年を通して苦楽を共にしてきたという「線」がある。

…高津臣吾『一軍監督の仕事』より引用

今年のスワローズはケガでの離脱者や不調の選手がいて、なかなか波に乗ることができていません。チームが負けると、SNSでは選手や監督に対して厳しい批判をしている人が多く見受けられます。不調の選手を使うなと言ったり、監督の采配がおかしいと言ったり、結構言いたい放題です。期待の裏返しかもしれませんが、もう少し長い目で見て上げても良いのではと思いました。

調子の悪い選手を使うことを今はマイナスかもしれませんが、長いシーズンを通して見たとき、結果的にはプラスに変わるかもしれません。試合に出ることで選手は本来の調子を取り戻して、以降大活躍するかもしれないからです。

その日の結果の「点」だけではなく、今まで積み重ねてきた「線」でチームを見守るのが大事だと思います。采配一つ一つには今まで積み重ねてきたものがあるので、チームの内部事情を想像して試合を見るのも面白いかもしれません。

最後に

本書を読んで思ったのは、本当に高津さんがスワローズの監督で良かったなということです。野村監督時代に築き上げた野球観を継承し、さらに発展させていこうという決意が見てとれました。スワローズを愛している高津監督なら必ず新しい「スワローズ・ウェイ」を確立することができると信じています。

チームとして苦しい時期も必ずやってくると思いますが、それでも、今年も変わらずにスワローズを”応燕”していきます。目指せ!2連覇!

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