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『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』感想 どちらから読むかで物語の印象は大きく変わる

乙野 四方字先生の小説、『僕が愛したすべての君へ』(以降『僕が~』)『君を愛したひとりの僕へ』(以降『君を~』)の2作品を読みました。並行世界を題材としていてSF要素の強い小説ですが、話しの中心となるのは主人公とヒロインの恋物語です。1冊のページ数は250ページと短いので、とても読みやすいと思います。

2つの作品はどちらから読んでも大丈夫なのですが、両方読まないとストーリーでわからない部分が出てきます。どちらか読んだ際は、もう一方の作品も読んでみてください。異なる並行世界に存在する登場人物の心情やストーリーの裏側を知ることができるので、片方の作品だけでは味わえない感動を味わうことができます。

個人的には『僕が~』から読んだほうが良いと思いました。理由は後述しますが、『君を~』は『僕が~』に比べると話しが難しいと感じたからです。『君を~』は並行世界の事象に関する説明が、複雑だと思いました。私は『僕が~』の方が読みやすかったので、まずは読みやすい方をおすすめします。

ですが、どちらから読むかで物語の印象は大きく変わるので、作品を読む順番は少し考えて見て欲しいです。

それでは、今作品の感想を述べていきます。ネタバレは極力していないので、未読の方も安心してご覧ください。

主人公は同じだけど違う

2つの作品は、どちらも暦という男性の一生を描いています。異なる並行世界に存在する暦の別の可能性を描いたのが、『僕が~』と『君を~』です。

暦の生涯は離婚した両親のどちらについてくかで大きく分岐します。母親についていった場合は『僕が~』の高崎暦。父親についていった場合は『君を~』の日高暦となります。2人は同一人物なのですが、高崎暦は自分のことを「僕」と呼び、日高暦は自分のことを「俺」と呼び、性格が微妙に違います。

育ち方が違えば、人生で出会う人や出来事が変化します。どちらの作品にも共通のキャラクターが登場するのですが、それぞれの暦は違う出会い方をするので、作品ごとにキャラクターへの印象が変わってきます。特にヒロインの1人である和音の印象は、『僕が~』と『君を~』では大きく変わりました。

『僕が~』『君を~』どちらから読めばいいか

私は『僕が~』をから読みました。『僕が~』はSF要素を詰め込んだオーソドックスな恋愛物語で読みやすいと思います。ただ『僕が~』は『君を~』を読んでいないとストーリーでわからないところが出てきます。(特に冒頭とラスト)『僕が~』を先に読んでから、『君を~』を読むとストーリーの謎が解明されていくので、謎解きが好きな人にはおすすめです。

『君を~』はSF要素が強かったり、『僕が~』に比べると話しが全体的に暗かったりするので、2回目に読んだ方が良さそうな気がします。ただ、『君を~』を読んだ後に『僕が~』を読んだ方が読後感はスッキリします。逆に『君を~』を後で読むと切ない気持ちになるかもしれません。

なので、まずは世界観を把握したいという方は『僕が~』を、ストーリーを楽しみたいという方は『君を~』から読んでみてはいかがでしょうか。

並行世界をもし移動できたなら

誰もが一度は妄想したことのある「あのときこうしていれば」。無駄だと分かっていても違う人生の可能性に夢を見てしまいます。もし並行世界を移動して今とは違う人生を歩むことができたら、あなたはどうしますか?

私だったら、もし今よりも良い生活が並行世界で待っていても、結局は元の世界に戻ると思います。移動した先がどんなに良くても、そこから先の人生が全て上手くいくとは限らないからです。病気になる可能性や事件に巻きこまれる可能性があります。もしそうなったとき、並行世界に移動しなければ良かったと思うかもしれません。反対に今が悪くても、これから良いことが起きる可能性はあります。

私は別の可能性を知ることは楽しいことだと思いますが、自分の世界で生きていくことが結局は一番落ち着くと思います。良いも悪いも、自分の感じ方や行動次第でいくらでも変わるからです。

並行世界を知覚できたときの様々な可能性が、『僕が~』と『君を~』では描かれています。本作品を読んで、もしも並行世界があったなら自分ならどうするか妄想してみても面白いかもしれません。もしもの人生を実現できるなら、あなたはどうしますか?

最後に

並行世界の異なる可能性を描いた『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』。2作品はそれぞれ異なる物語として独立していますが、実は繋がっています。1作品だけを読んだときの物語への印象と2作品とも読んだときの印象は、まったく違うものでした。どちらから読むかで作品に対する印象も変わりますので、未読の方はよく考えてから読む順番を決めてみて欲しいです。

『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』は2022年の10月7日に2作品がアニメーション映画として同時公開されます。小説でも映画でも2度楽しめるので、興味がある方は映画版もチェックしてみてください!

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