人と人とのつながりの大切さを教えてくれる1冊
百田尚樹先生の『夏の騎士』を読みました。本作は約3年ぶりの百田先生の長編小説です。百田版「スタンド・バイ・ミー」と銘打たれ、子供も、大人も楽しめる作品になっています。
本作は、「夏休みの読書感想文の宿題の時に読みたい1冊」だと思います。理由は文章が軽快なのと、ストーリーがテンポよく進むので、とっても読みやすいからです。そして百田先生の人生訓も随所に組み込まれており、下手な自己啓発本を読むよりもためになります。読みやすさと、深みがあるので、小学生高学年、中学生や読者初心者におすすめの1冊です。
それでは、『夏の騎士』の感想を書いていきます。
読みやすい文章、テンポ良いストーリー
冒頭にも書きましたが『夏の騎士』は、とにかく読みやすい作品であることは間違いありません。序盤は説明が少し多かったりして読みづらい部分もありますが、序盤を抜けたらクライマックスまで一気に読むことができます。
読みやすさの一因として、キャラクター同士の会話が軽快でおもしろいことがあげられます。どのキャラクターもキャラが立っているので、会話に個性があります。さらに関西弁でたたみかけるように会話が進むので、テンポ良く読み進めることができます。
また、ストーリーもテンポ良くすすみます。
『夏の騎士』で描かれるのは小学生の日常なので、劇的な出来事はたくさん起こらず、物語に大きな起伏はありません。
しかしイベントが矢継ぎ早に起こるので、退屈することはありません。むしろ次から次へ起こるイベントの行方が気になり、ページをめくる手が止まらなくなります。気づいたら一気読みしているはずです。(私は一気読みしました)
くせのあるリアルなキャラクター
先ほども少し触れましたが、『夏の騎士』に登場するキャラクターは、どれもくせがありキャラが立っています。
太っちょで気が弱くて勉強ができないけど、心優しい陽介。優秀な兄2人にコンプレックスを抱き吃音症になってしまったが、やるときはやる健太。
主人公の友人2人を始め個性の強いキャラクターがたくさん登場しますが、その中でも特に個性の強いキャラクターがいます。それは壬生紀子です。
あだ名のひとつは「おとこおんな」だ。髪の毛は坊主みたいに短く、おまけに口の周りにはうっすらとヒゲが生えていた。
…百田尚樹『夏の騎士』より
これは壬生紀子を紹介している文章です。これだけでも結構衝撃を受けると思います。さらに服装も男みたいで、口が悪くて、クラスの女子から嫌われています。ここまでアクの強いキャラクターはなかなかいません。
でも壬生紀子って、何だかリアルなんですよね。実際に壬生紀子みたいな女の子っています。私が小学生の頃にも、クラスに「野人」というあだ名の女子がいました。(今思うと本当にひどいあだ名をつけたなと思います。ごめんなさい)
壬生紀子も実際のモデルがいる登場人物だと思います。なぜなら妙にリアルで、見たことがないのに顔が浮かんでくるからです。実際に観察したことがないと、このリアルさは表現できないと思います。
そして深みのある魅力的なキャラクターです。物語が進むにつれて、色々な一面が見えてきます。壬生紀子の魅せ方は本当にうまいなと思いました。
壬生紀子は衝撃的なキャラクターではあるのですが、実際にいたいたと言いたくなるキャラクターでもあるのです。こういったくせがあるリアルなキャラクターの登場が、本作の魅力の1つでもあります。
百田尚樹の人生訓
『夏の騎士』の中には、いくつか百田尚樹の人生訓が散りばめられています。その中でも特に印象に残った言葉を1つご紹介します。
書店に置いてある『成功者になるための十の法則』や『社長がいつもやっている七つの習慣』のような自己啓発本を読んでも、成功をつかむことをできないと百田先生はおっしゃっています。そして、成功へのただ一つの道は「今やるべきことをやる」だと教えてくれています。
バカバカしい。そんな呪文が千円やそこらの本に書かれているなら、それほど安い買い物はない。成功へのただ一つの道であり、しかも最高の法則は、「今やるべきことをやる」―それだけだ。
…百田尚樹『夏の騎士』より
自己啓発本を今まで何冊も読んできた私にとっては、この言葉は響きました。本を買って、読むだけでは人生は変わりません。百田先生が「今やるべきことをやる」と言うように、行動しないと何も変わりません。今自分がやらなければならないことを見極めて、行動することが必要です。
本は行動をおこす切っ掛けを与えてくれるかもしれませんが、本を読むだけでは人生を変えることはできないと肝に銘じなければいけないと思いました。
まとめ
- 抜群に読みやすいので、読者初心者におすすめ
- くせのあるリアルなキャラクターが物語を魅力的にしている
- 百田尚樹の人生が詰め込まれている
『夏の騎士』は人と人とのつながりの大切さを教えてくれていると思います。
心で繋がり、損得勘定を抜きにした人間関係は、絶対に壊れることはありません。数は少なくても心からの仲間がいれば、人生は豊かになります。
また何気ない出会いが、後に大きな意味を持ってくることもあります。出会いを大切にしていれば、思いがけないところで助けられることもあるかもしれません。
そういった人と人とのつながりの大切さを改めて教えてくれました。出会った人全てに感謝をして、大切にしていきたいと思います。
『夏の騎士』は大切なことを教えてくれる作品です。読書感想文の宿題で何を読んだら良いか迷っている方は、ぜひ手に取ってみてください。