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『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』感想 悪い意味で心に伝説を残した映画(ネタバレあり)

そして、伝説へ・・・

『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』『ドラゴンクエストV』をベースに製作された3DCGアニメーション映画です。総監督・脚本を山崎貴が担当しています。
主人公の声を佐藤健が演じ、ヒロイン・ビアンカの声を有村架純が、フローラの声を波瑠が演じています。

『スッキリ』での映画番宣を見たときに、CGの出来が良かったので、期待に胸を膨らませながら映画館に行きました。映画を見ていて、終盤までは楽しめました。しかし終盤で完全に裏切られました。映画を見終わったあとに、時間を返して欲しいとさえ思ってしまいました。

これから見に行く人は、ドラクエの映画だと思って見に行かない方が良いです。私が見たのは『ドラクエ』の映画ではなかったと思います。

それでは、感想を書いていきます。重大なネタバレありなのでご注意ください。

終盤のドンデン返しにドン引き

ストーリーは『ドラクエⅤ』をダイジェストにして進みますが、最後の最後に大ドンデン返しが待っています。ゲマを倒し、次に魔王ミルドラースが現れると思ったときに、主人公以外のキャラクターが突然動かなくなります。
そして、上空から現れたのはドラクエ世界には登場しない、映画『アイ・ロボット』に出てくるようなアンドロイドでした。

アンドロイドは自らをウィルスと名乗り、この世界はVRの仮想ゲームだと言います。ウィルスはドラクエのゲーム世界を破壊するためにやってきました。

そして、世界の真の姿を見せると言って、キャラクター達、戦っていた城のテクスチャを全て剥がして、色のない真っ白な世界にしてしまいます。ビアンカも息子のアルスもゲレゲレも、全てゲームのプログラムだったのです。

ここで一気に冷めました・・・。今までのストーリーはいったい何だったのか。映画を見ていて、椅子からずっこけそうになったのは今回が初めてです。乾いた笑いがこみ上げてきました。

パパスの死で悲しくなったのも、ビアンカとフローラにドキドキしたのも、ブオーンとの戦闘でハラハラしたのも全部嘘でした。全てプログラム、作りものだったのです・・・。

こんなことあります・・・!?

映画の中で、映画で起こった出来事を全て否定されました。今まで私が見ていた映像はなんだったのでしょうか。私はドラクエの世界を見せられていませんでした。ドラクエの世界を再現するVRゲームを楽しむ男の姿を、見せられていたのです。

ドラクエの世界を楽しみ、夢を見させて欲しかったから映画を見に行ったのに、ドラクエの皮を被ったVRゲームのプレイ動画を見せられました。正直、騙された気分になり納得いかなかったです。

何食わぬ顔をされても、冷め切った心は戻らない

ゲームを否定するウィルスに対して、主人公はあれやこれやとゲームを肯定する言葉を並べて対抗しますが、一度作品の全てを否定されているので、冷め切った心は戻ってきません。

極めつけはスラりんの正体。主人公がウィルスの攻撃を受けている最中に突如現れ、山寺宏一のイケメンボイスで「私はウィルスに対抗するための抗体プログラムだ」みたいなことを話し始めます。

スライムにそんな言葉しゃべらせちゃダメでしょう・・・。

スライムにメタ発言して欲しくなかったです。スライムの皮を被ったプログラムの存在に冷え切った心は更に冷え込みます。

最終的にはウィルスを倒して世界は元に戻ります。しかし何事もなかったかのように話すビアンカやアルスには、もう何も感じることはありませんでした。なんちゃってドラクエごっこを見せられるのは、とてもつらかったです。

しかし制作陣からしたら、インパクトを残せたので成功なのかもしれません。普通にミルドラースが登場していたら、ここまで騒がれる映画になることはなかったと思います。VRオチにすることで、多くの観客の心に深いダメージを負わせ、一部からは『令和のデビルマン』と言わしめる作品になったのですから、ある意味では大成功です。

映画で良かった箇所

駄目だったところを書いてきましたが、良いところもあります。

①CGの出来

CGの出来はものすごく良かったと思います。日本の技術でも、ここまでの3DCGアニメができるんだと素直に感心しました。モンスターの質感とかすごく良かったです。キラーマシンの上半身がクルクル回転する動きは、見ていてワクワクしました。メラゾーマやバギマなどの魔法のエフェクトも格好良かったです。

②フローラの評価が変わった

『ドラクエV』でビアンカとフローラどちらを選ぶと聞かれたら、迷わずビアンカを選んでいましたが、今回の映画を見てフローラも良いなと思うようになりました。

今までビアンカ派だった人ほど、今回の映画を見たらフローラも良いなと思うはずです。自分から身を引く良い娘なんですよね。主人公の事を本当に真剣に考えてくれるキャラとして描かれていました。

波瑠の演技も良かったです。まさか変身後の老婆の声も担当していたとは思いませんでした。新しいフローラ像が今作の映画で作られたと思います。

最後に

壮大なドラクエの物語を2時間の映画にまとめることが、もともと無理な話でした。親子3代にわたる壮大なストーリーは2時間じゃまとめきれません。ストーリーを改変するのは致し方なかったと思います。

もし今回の映画を3部作で制作すれば、原作を忠実に再現できて、ファンからも一定の評価を得られたと思います。ただそれでは、ゲームの模倣になってしまって、ゲームの感動を越える作品を作ることはできなかったでしょう。

だから、映画をただのゲームの模倣ではなく、ゲームに並び立ち、そして越える存在にするためには、今回のVRオチの仕掛けは必要だったのかもしれません。

そういう意味では監督のチャレンジは評価できます。『ドラクエV』の土俵ではなく、『ドラクエVの思い出を肯定する物語』(肯定できていたかは不明)という土俵で映画を世に出しました。これならゲームの『ドラクエV』とは別次元で勝負できますから、ゲームに勝てる要素が出てきます。

でもファンが求めているのは、そんなドラクエ映画ではないはずです。監督が私物化した『ドラクエV』を見たかったわけではありません原作を忠実に再現したリメイク作品を見たかったはずです。原作のシーンに思いをはせ、もう一度ゲームをプレイしたくなる作品を見たかったはずです。

求めていたものとまったく違ったものが出てくれば、ファンが失望するのは当たり前です。映画を見た観客から批判を受けるのは当然だと思います。

しかしゲームの素晴らしさを改めて実感できたので、その意味ではこの映画は成功だったのかもしれません。私はまた『ドラクエV』をプレイしたくなりました。

ちなみに、『ドラクエV』はApp StoreとGoogle Playで有料アプリが販売しています。(8月12日まで1200円で販売しています)。PS2、DSでもドラクエVは販売していますので、懐かしくなってプレイしたくなった方はチェックしてみてください。

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